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- 配球は読むべき? 大阪桐蔭で学んだ「ストレート待ち」の打撃論
■大学時代に苦い記憶 阪神・坂本誠志郎捕手 私は現役時代、あまり配球を意識せずに打席に立っていました。ストレートにタイミングを合わせながら、変化球が来たら対応する形です。そのため、打席では相手の捕手を意識することなく、投手との対戦に集中していました。 しかし、中には気になってしまう捕手がいました。インコースにミットを構えている気配を出して投手にアウトコースを要求したり、わざと打者に足音が聞こえるようにして構える場所を移動していると感じさせたりする捕手がいます。そういうタイプは嫌でした。意識しないようにしても、「今、絶対にインコースに構えた」などと気になってしまいます。捕手の動きに気を取られ、投球に集中できなくなります。 特にやりづらさを感じたのは、現在阪神でプレーしている坂本誠志郎捕手です。学年が1つ上の坂本捕手とは、大学時代に対戦しました。坂本捕手は打者が嫌がるあらゆる策を講じてきました。投手がセットポジションに入ると打者に分かるように動いたり、逆に気配を消したりします。 打者に聞こえるように、ぼやくこともありました。大きな独り言のように「今の球は少し甘く入った。危なかった」、「ストレートを待っている反応だったな」とつぶやきます。ルールの範囲内で、いかに打者の意識を捕手に向けさせて投手への集中力を失わせるかを考えていたのだと思います。 大阪桐蔭で甲子園春夏連覇を達成 ■大阪桐蔭の後輩 森友哉選手がプロで驚いた“難敵” 配球に関しては、最近は高校野球でも分析に力を入れている印象を受けます。相手バッテリーの傾向を読み、狙い球を絞って打席に入るのは1つの戦術です。データに関心を持ち、考える習慣を身に付けることも上達につながります。 ただ、大学や社会人といった上のカテゴリーを目指すのであれば、高校生の時はストレートを待ちながら変化球に対応する技術を磨く姿勢が重要だと考えています。 大阪桐蔭高校では私も含めて、球種やコースを張らずに打つ選手が大半でした。1学年後輩だった森友哉選手も、そうでした。森選手が西武に所属していた時、プロでもストレート待ちで変化球に対応できるのか質問したことがあります。森選手は「その形で対応しています」と答えていました。しかし、それでは対応できない投手が数人いたそうです。 まず森選手が名前を挙げたのは、当時日本ハムに所属していた大谷翔平投手です。大谷投手のストレートは、「ストレートを待っていても打てない」と話していました。それから、ソフトバンクでプレーしていた千賀滉大投手のフォークと武田翔太投手のカーブは、ストレート待ちでは対応できなかったそうです。 亜細亜大学時代の水本 ■監督の「プラン通り」 大舞台に代打で逆転2ラン 大学野球では、選手以上に監督が配球を含めたデータを重視していると感じました。ストレート、縦の変化球、横の変化球に強いタイプの打者を把握し、その特徴に合わせてスタメンや打順が組まれる試合もありました。ベンチから、狙い球を指示される選手もいました。 配球を意識した戦い方で印象に残っている試合は、亜細亜大学3年生の時の神宮大会です。準決勝の東海大学戦で、私は8回に代打で出場して逆転2ランを放ちました。 私は監督から、変化球に合わせたり、拾ったりするのが得意だと思われていました。東海大学との一戦では、チェンジアップを武器とする右投手の登板を見越して、私をベンチに残して代打に送ったと説明を受けました。チェンジアップを捉えた本塁打に、監督は「プラン通り」と言っていました。 この打席では、監督からチェンジアップを狙うように指示されました。ただ、私は狙い球を絞るとその球が来た時に力んでしまい、凡打になる傾向があると自覚していました。そこで、いつも通りストレートにタイミングを合わせ、泳ぎながらチェンジアップをスタンドに運びました。最初からチェンジアップを待っていたら結果は違ったかもしれません。
- 野球のデータはどこまで信じる? 大阪桐蔭、亜細亜大で感じた落とし穴
写真はイメージ ■大阪桐蔭の伝統 寮の食堂でタイミング合わせるミーティング MLBをはじめ、最近の野球はデータが重視されています。高校野球でも、データ班をつくるチームが増えています。 私が所属した大阪桐蔭高校では、メンバーを外れた部員がデータ分析を担当しました。ただ、カウント別の配球のような細かいデータはなく、担当者が試合を見て「打者がストレートに遅れている」、「変化球の割合が高い」といった印象をメモし、チームで共有する形でした。 それ以外の対策としては、相手投手の映像をチェックしました。大阪桐蔭では、試合の数日前になると、対戦を想定してタイミングを取るためのミーティングがありました。選手が寮の食堂に集まり、全員で投手の映像に合わせてタイミングを取ります。スイングをするわけではなく、タイミングを合わせるだけのミーティングです。今振り返ると異様な光景ですが、当時は当たり前の準備として毎試合続けていました。 安打の確率を上げるためには、打撃フォームや筋力など様々な要素が必要になりますが、結局はタイミングが合わなければバットに当てることさえできません。それだけ、タイミングが大事なわけです。 大阪桐蔭では甲子園春夏連覇を達成 ■亜細亜大では詳細なデータ分析 メリットとデメリット 亜細亜大学に進むと、データが詳細になりました。相手投手の成績や特徴から始まり、「変化球が続く確率」や「初球の球種の傾向」など、カウントや走者別の配球もかなり詳しかったです。チーム内にデータを収集して分析する部員がいて、試合の約1週間前になると、監督とコーチ、データ班、ベンチ入りメンバーでミーティングしました。大学は高校と違ってリーグ戦なのでデータを集めやすく、情報量は多かったです。 データの活用法は、選手のタイプによって異なります。共有した情報をフルに活用する選手もいれば、相手投手の持ち球を頭に入れるだけの選手もいます。私は球種を張るタイプの打者ではなかったので、データは参考程度にとどめていました。データを重視して打席に入った時期もありましたが、データがことごとく外れた経験も理由の1つです。 バッテリーは、相手打者の調子や反応を見て配球を決めます。そのため、事前の分析と傾向が異なるケースもあります。自分たちがデータ分析されていることを逆手に取って、これまでとは全く異なる配球をしてくるバッテリーもいます。確率を考えるとデータ通りになるのかもしれませんが、自分には合わないと感じました。 カウント別の配球データには、メリットもデメリットもあります。例えば、2ボール、0ストライクの時、80%以上の確率でストレートが来るデータを頭に入れて打席に入ると、その状況になった時、「次はストレートに違いない」という考えが自然と働いて、甘い変化球に反応しづらくなります。その通りにストレートが来た時も、私は力んで打ち損じることが少なくありませんでした。 それから、分析のもとになるデータは担当者の目視とスピードガンが基本です。球種や球の軌道が正確にデータ化されるMLBやNPBと比べると、当然ながら緻密さが異なります。当時、私は試合後、データ班と一緒に球場に残って、他のチームの試合を観戦することもありました。スタンドから見る相手投手の球は、打席と見え方が変わります。 また、データ班と私の見解にも違いがありました。ストレートと変化球の違いはスタンドからでも分かりますが、球種ははっきりしません。カットボールなのかスライダーなのか、それとも球速の速いカーブなのか、判断が難しいです。そうなると、データ班が算出した球種の割合は、自分の感じ方と差が生まれる可能性があります。 大阪桐蔭高校卒業後は亜細亜大学でプレー ■東邦ガスは相手打者の傾向も分析 アナライザーも経験 大学で集めたデータはバッテリーに関する内容が中心だったのに対し、社会人の東邦ガスでは、バッテリーに加えて相手打者の傾向も詳しく分析していました。打者の打球方向のデータは、守備のポジショニングを決める際に有効でした。 東邦ガスにはアナライザーがいました。私も右膝の前十字靭帯断裂で戦列を離れた時期、アナライザーを担当しました。チームから離れて、全国各地の球場に行って、対戦する可能性のあるチームの試合を観戦しました。相手投手の球種や球速、打者の打球方向などを細かく記録する役割です。大会が近づくとバッテリーコーチも分析に加わり、集めたデータをもとにミーティングしました。 社会人野球でも、私はデータに頼りすぎないようにして打席に入りました。相手投手の球種を把握する程度でした。ただ、バントやエンドランなど、点差やアウトカウントによって相手チームが仕掛けてくる攻撃の戦略は、データ通りになる確率が高いと実感しました。そのため、守備ではデータを重宝しました。 野球は「頭を使うスポーツ」、「間のスポーツ」と言われます。結果を出すために技術やフィジカルを向上させるだけではなく、どのようなデータを集めて活用するのか。その重要性が今後さらに増していくと感じています。
- なぜ大阪桐蔭は夏の甲子園を逃したのか 元主将が見た誤算と打線の課題
夏の甲子園出場を逃した大阪桐蔭 ■センバツ優勝投手 夏の大阪大会直前に離脱 夏の甲子園が開幕しました。私の母校・大阪桐蔭高校は今大会の出場を逃し、履正社高校が大阪代表として戦います。 大阪桐蔭は今春の選抜高校野球大会で優勝し、甲子園春夏連覇の期待がかかっていました。しかし、大阪大会の4回戦で延長10回タイブレークの末、2-3で大阪立命館に敗れました。 優勝したセンバツの戦いを見た限り、大阪桐蔭は夏も甲子園に行く可能性が高いとみていました。想定外だったのは、2年生左腕・川本晴大投手の離脱です。センバツでは決勝戦で完投するなどチームを牽引する存在でしたが、大阪大会直前にけがが判明し、メンバーを外れました。 大阪桐蔭は選手層の厚さも特徴です。川本投手を欠いても、他の投手陣で大阪大会を勝ち抜ける力は十分にあります。ただ、センバツを見ていて、気になる点がありました。それは、エースナンバーをつける吉岡貫介投手の投球です。 ■センバツで感じた不安 修正できなかったエースの制球 速球の最速は150キロを超え、変化球も器用に操る吉岡投手の能力は高校生の中でトップレベルです。ただ、センバツでは本来の投球とは言えない内容でした。甲子園の舞台に緊張し、一時的に上手くいっていない感じには見えませんでした。 甲子園には独特の緊張感があります。高校生の憧れの舞台であり、あれほどの観客の前でプレーする機会は甲子園だけです。その影響で、試合序盤に投手が制球を乱すケースは珍しくありませんが、吉岡投手はイニングが進んで雰囲気に慣れてくるはずの場面や、心に余裕を持てる状況でも、コントロールに苦しんでいました。精神面ではなく、投球フォームなど技術的な部分に原因があると感じました。 大阪桐蔭には川本投手のほかにも、左腕の好投手がいます。吉岡投手がセンバツの課題を修正できていれば、川本投手不在でも、夏の甲子園に出場できると考えていました。しかし、夏の大阪大会も吉岡投手は復調したとは言えず、打線も迫力を欠いて4回戦敗退となりました。 8月5日開幕した夏の甲子園 ■雰囲気を変える「長打」 今年の大阪桐蔭で課題 もちろん、大阪桐蔭が甲子園に出場できなかった理由は吉岡投手の責任ではありません。どんな試合も、1人の選手によって勝敗が左右されることはないと思っています。勝敗は様々な要素が組み合わさった結果です。特に、一発勝負のトーナメントには難しさがあります。 今年の大阪桐蔭の試合を追っていると、長打力の必要性を感じました。何試合も戦っていると、なぜか攻撃がちぐはぐでかみ合わない時や、流れに乗れない時が出てきます。そういった試合は、なかなか安打が続きません。 しかし、長打力のある打者がいると、2死から四死球で出塁した走者を還したり、本塁打で雰囲気を変えたりすることができます。大阪桐蔭は今春のセンバツで、単打に盗塁やエンドランを絡めた攻撃を見せていました。そこに長打という選択肢が加われば、夏の結果は違っていたかもしれません。 ■全国各地で強豪校が地方大会敗退 「波乱」ではない理由 今夏の甲子園は、大阪桐蔭を含めてセンバツでベスト4に入った全チームが出場を逃しました。報道では「波乱」と伝えられていますが、これは十分に起こり得ると感じています。地方大会では、「負けて元々」と捨て身で挑んでくるチームが少なくありません。公式戦でほとんど登板していない投手を起用したり、大胆な戦略で相手のペースを狂わせようとしたりするチームもあります。 私たちの2学年上の代は、大阪大会の3回戦で府立桜宮に敗れました。私が高校3年生だった夏は甲子園で春夏連覇を果たしましたが、大阪大会3回戦で府立門真西に一度は逆転を許す展開でした。4回戦の箕面東戦は得点が6回の2点だけで、3安打に抑えられています。紙一重で勝利を手にして、大阪代表の座をつかみました。 負けたら終わりのトーナメントでは、劣勢の展開になると、どうしても焦りや恐怖心が生まれます。試合終盤にチャンスが巡ってくるはずと思いながらも、本当に得点できるのかという不安が頭をよぎります。投手が不安定な時は攻撃陣が慎重になり過ぎ、得点が入らない展開では、投手が必要以上に神経を使い、チームとして悪循環に陥りがちです。 だからこそ、地方大会を勝ち抜き、甲子園にたどり着くことには大きな価値があると思います。大阪桐蔭には今夏の敗戦を次の成長につなげてほしいですし、履正社をはじめとした出場校が、一発勝負の重圧の中でどのような力を発揮するのか注目しています。
- ドラマは減る? 暑さ対策に有効? 高校野球7イニング制の賛否
■議論進む7イニング制 約7割の高校が反対 高校野球の試合を現在の9イニングから7イニングに短縮する議論が続いています。監督経験者や医師をはじめ、長年にわたって野球に関わってきた人たちが参加する意見交換の場も設けられています。 7イニング制が検討されている背景には、年々厳しくなる暑さへの対応や、野球部員の減少があります。一方、日本高校野球連盟が加盟校を対象に実施したアンケートでは、約7割の高校が導入に反対しているそうです。 特に部員数の多い高校ほど反対する割合が高く、その理由には「選手が試合に出る機会が減ること」が多く挙げられています。試合終盤の劇的な展開が少なくなり、野球本来のおもしろさが薄れるのではないかという声もあります。 私の母校・大阪桐蔭高校の西谷浩一監督も、7イニング制に強く反対している一人です。報道によれば、「最も暑い時間帯でも、3イニングごとに休憩を入れれば熱中症の予防につながる」、「7イニングになることで先発投手の球数が減り、同じ投手を連投させるチームが出てくる可能性がある。ようやく定着してきた投手のけが予防や複数投手制に逆行する」といった趣旨の指摘をしています。 年々暑さが厳しくなる夏の高校野球 ■甲子園は快適 暑さが厳しいのは試合より練習 私自身は、7イニング制を導入する理由に疑問を持っています。最大の目的とされている熱中症対策について、イニングを2つ減らすことで大きな効果が得られるとは考えにくいからです。 野球では、攻撃中にグラウンドへ出ているのは打者と走者だけです。それ以外の選手は屋根のあるベンチで待機し、こまめに水分を補給できます。現在は5回終了後にクーリングタイムも設けられています。 特に甲子園のベンチは涼しく、過ごしやすい環境です。私が甲子園でプレーした14年前と比べて、現在の方が暑さは厳しくなっていますが、当時、試合中に暑さを強く感じた記憶はありません。 高校野球を経験した人には共感を得られると思いますが、暑さという点では試合よりも日々の練習の方が圧倒的に厳しいです。本気で熱中症を防ごうとするのであれば、試合のイニング数を減らすより、練習方法を見直す方が効果は大きいと感じます。全試合を一律に7イニングにするのではなく、例えば地方大会の3回戦までは7イニングで実施するなど、一部の試合に限って導入する方法も考えられます。 ■選出の出場機会増やす動きと逆行 大学やプロとの違いも課題 甲子園を目指す高校は、暑い中でも一定量の練習を積んでいます。その一方で、進学校や部員数の少ない高校の中には、練習時間が比較的短いチームもあるかもしれません。普段から日なたで練習する時間が短い選手にとっては、試合中の暑さが大きな負担になる可能性があります。 暑さ対策とは別に、7イニング制が選手の出場機会を増やす流れと逆行する点も気になります。甲子園では今春のセンバツからDH(指名打者)制が導入されました。ベンチ入りできる選手が近年2人増えたことも含め、より多くの選手が試合に関われる仕組みづくりが進んでいます。しかし、試合が7イニングになれば、実際にプレーできる選手は減ると予想されます。 さらに、高校野球だけが7イニングになった場合、選手が大学や社会人、プロへ進んだ時に、集中力や体力の面で課題が生じる可能性もあります。ただし、私は7イニング制そのものに反対しているわけではありません。イニング数を減らすことで高校野球が抱える課題を解消できるのであれば、検討する価値は十分にあると思っています。 また、「7イニングになると試合のドラマが減る」という意見についても、必ずしもそうとは限らないと考えています。確かに、野球は8回や9回に試合が大きく動き、劇的な展開になる印象があります。 終盤のドラマが高校野球の醍醐味の1つ ■終盤のドラマは減らない? 7イニングで新たな可能性も 私も高校時代、終盤に逆転した試合を数多く経験しました。2012年のセンバツでは、9回に試合をひっくり返した準々決勝の浦和学院戦をはじめ、終盤に流れが大きく変わる試合がほとんどでした。序盤にリードされても、西谷監督は「後半、後半」、「我慢していれば、後半に必ずチャンスがめぐってくる」と繰り返していました。 序盤から平凡な内野ゴロでも全力で一塁まで走れば、相手の内野手に「少しでもミスをすれば出塁を許してしまう」というプレッシャーを与えられます。その積み重ねが相手の意識に残り、終盤の焦りにつながります。こうしたドラマは、9イニングだから生まれるというより、試合の終盤に高まる緊張感や、選手の集中力が研ぎ澄まされることで起きるのだと思います。 7イニング制になれば、6回や7回が現在の8回、9回と同じ意味を持つようになります。劇的な展開が起きるタイミングが早まるだけで、7イニングならではの戦術やおもしろさが生まれる可能性もあります。 野球は9回で行うものだという形が長く続いてきました。そのため、イニング数を減らすことへの抵抗感が生まれるのは自然です。それでも、長年の常識や当たり前を一度見直し、より良い方法がないか考えることには意味があります。そうした議論が、高校野球の新しい魅力を見つけるきっかけになると考えています。
- あきらめかけた日本代表入り 4打数4安打でつかんだ最後の1枠
■甲子園春夏連覇を達成後 日本代表の合宿に合流 先月のコラムでは、私が独断で選んだ「同級生ベストナイン」をお届けしました。そのベストナインの中には、高校日本代表でチームメートだった選手もいます。今回のコラムでは、高校3年時に選出された日本代表をテーマに綴ります。 2012年の夏、甲子園で春夏連覇を成し遂げた数日後に、私はU-18(18歳以下)日本代表の合宿に合流しました。このチームは、韓国で開催された「第25回AAA世界野球選手権大会」に参加するために結成されました。 日本代表入りは、高校時代に掲げた目標の1つでした。同世代の最強メンバーと一緒にプレーしたいと思っていました。 代表のメンバー選考は、途中経過が伝わってきます。まずは、候補に入っている段階でパスポートを申請するように、所属する高校の監督から伝えられます。国際大会なので、代表入りが正式に決まってからパスポートの手続きを始めても間に合わない可能性があるためです。 写真はイメージ ■「水本くんともう1人の選手で…」 “大逆転”でメンバー入り そして、選考が進むにつれて、色々な情報も耳に入ってきます。甲子園の大会期間中に報道陣の囲み取材を受けていた時、私は記者の方に、こう告げられました。 「外野手は最後の1人で、水本くんともう1人の選手のどちらを選ぶのか首脳陣は悩んでいるみたいだよ」 その取材を受けている最中、最後の1枠を争うライバルが本塁打を放ちました。その情報を聞いて、私は「やられた」とあきらめかけました。しかし、私は直後の試合で4打数4安打の大当たり。後に聞いた話では、この試合の活躍が代表入りの決め手になったそうです。 日本代表では、キャプテンを任されました。代表チームには、私よりもリーダーシップのある選手がたくさんいました。ムードメーカーは、光星学院の田村龍弘選手(現:ロッテ)でした。それでも、私が任されたのは、夏の甲子園で優勝した日本一のチームでキャプテンをしていたからだと思っています。キャプテンだからといって特別なことをするより、能力の高い選手が集まるチームの中で、全体のバランスを取ることを意識していました。 ■小倉全由監督が指揮 選手の特徴生かしたチームづくり 当時の代表チームは、日大三高の小倉全由監督が指揮しました。小倉監督からチーム方針を説明された記憶はなく、「能力の高い選手を選んでいるから、その力を発揮できるように準備してほしい」と言われたくらいです。監督が目指す野球をチームに浸透させるよりも、監督自身が個々の選手の良さを消さないようにしていた印象を受けました。 代表チームは、短期間でチームをつくり上げる必要があります。練習の時間や場所も限られるため、高校での練習とは異なります。個々の技術練習やカットプレーなどの連携に時間を使います。トレーニングの時間がなかったのが、普段とは大きな違いでした。 練習時間が短く、トレーニングの時間もなかったため、疲労が抜けすぎて体がフワッとする感覚がありました。施設を確保するのは難しい事情があるかもしれませんが、試合の数日前まではトレーニングする時間があった方がよかったと今になって感じます。 高校3年生の時に甲子園で春夏連覇を達成 ■エンドランで知った 大阪桐蔭と他校の違い 代表チームは各学校から選手が集まってくるので、他の高校との違いを知る機会にもなりました。例えば、エンドランの捉え方は大阪桐蔭と他校では違いがありました。 大阪桐蔭では、エンドランのサインはアウトカウントによって、打者に求める内容が変わります。一塁に走者がいる場合、無死であれば、打者は空振りだけは絶対にしない打撃を意識します。走者を二塁に進めることが課せられた任務なので、ボテボテの内野ゴロでも構いません。 それに対し、1死の場面は一、三塁をつくりたいので、攻めのエンドランになります。併殺打を避けるためにセンターラインに打球を飛ばさないようにして、チャンスを拡大する打撃を心がけます。 2死一塁のケースでは、一塁走者を還すことが目的なので、長打にできる投球に狙いを定めます。ボール球はスイングせずに見逃しても構いません。同じサインでも、アウトカウントによって考え方を変える打撃は、意外と甲子園常連校でも少なかったです。 大阪桐蔭高校時代の水本 ■大谷翔平選手から意外な話 「寮に霊がいる」 グラウンド外でも、監督やコーチからは厳しいルールを設けられず、比較的自由でした。宿舎では他の部屋に遊びに行って、しゃべっていましたね。野球の話題が大半で、他校の練習内容や寮生活、他のチームメートについて話していました。 私は大阪桐蔭が日本で一番厳しい高校と自負していましたが、話を聞いていると、より大変そうな高校もありました。驚いたのは、練習試合の点差や失点数によってランニングの本数などのペナルティが変わる高校があったことです。大阪桐蔭では、そういったことがなく、試合後は試合で見えた課題を修正する練習に時間を割きました。各学校の寮生活が話題になった時、大谷翔平選手(現:ドジャース)から聞いた「花巻東の寮に霊がいる」という話は印象に残っています。 「AAA世界野球選手権大会」では、日本は12チーム中6位に終わりました。優勝できる自信を持って臨んだだけに落胆しました。実力以外の部分で国際大会の難しさを痛感したところもありました。そして何よりも、選手間が本音で話せるようになり、チームに一体感が生まれてきたタイミングで解散する寂しさが大きかったです。 高校日本代表でともに日の丸を背負ったチームメートは今、プロ野球や社会人野球で頑張っています。短期間でも一緒にプレーした仲間の活躍は、現役を退いてネクストキャリアを歩む私の活力になっています。
- 3期目は売上75%増 野球事業の成長の理由は「仕組み」と「口コミ」
野球塾は2校増えて計3校に拡大 ■野球塾を新たに2校開校 口コミでスクール生が増加 私が経営する「Ring Match」は、4月で3期目が終わりました。決算の正確な数字はまだ確定していませんが、売上は前年から75%以上伸びています。私は起業当初、事業計画に「最初の5年間で毎年1.5倍以上の成長」を掲げました。ここまでの3年間は目標を達成できています。 3期目の売上を牽引したのは、「野球塾」です。これまでの名古屋校に加えて、昨年6月に岐阜校、今年1月に石川校を新たにスタートしました。両校とも、口コミを中心にスクール生が増えています。 事業が伸びている最大の要因は、指導の仕組みが確立されているところにあります。野球塾のスタッフは、私が実際にスクール生に指導する様子を見るところからスタートし、指導のポイントを学んでいきます。選手のどんな動きを見ればよいのか、課題を克服するためにはどのようなドリルが有効なのかなど、私がこれまでに蓄積してきた知識と経験からノウハウを体系化しています。 スタッフたちは責任感や向上心が高く、指導力がどんどん上がっています。選手たちはスクールに通い始めてから所属チームでレギュラーをつかんだり、スイングが目に見えて変化したりしています。そうした成果が口コミにつながり、スクール生が増えています。同じチームから複数の選手が通っているケースは多いです。 売上好調のニュートンバット ■新卒のサポートに注力 人材紹介事業も着実に成長 野球塾でも使っている「ニュートンバット」の販売も、大幅に伸びました。リニューアルしたバットの販売を4月から開始し、以前のバージョンと比べて約5倍のスピードで売れています。購入した子どもたちからは「スイングスピードが上がったのが自分でも分かります」、「試合でヒットを打てるようになりました」といった声をいただき、試行錯誤して開発した甲斐があったと喜びを感じています。 野球経験者に特化した人材紹介事業も、順調に成長しています。転職希望者に加えて、2期目から新卒のサポートも始め、3期目は形になってきました。 人材事業も、野球塾同様に口コミの力が大きいです。弊社のサービスに登録して転職に成功した人からの紹介や、就職や転職に悩んでいる人が身近にいる知人からの紹介などがサービス登録のきっかけとなっています。 私たちのサービスの特徴の1つに、アフターフォローの手厚さがあります。就職や転職が決まった後も、サービス利用者にヒアリングして、入社前のイメージとギャップなく働けているかなどを把握するようにしています。そうした声を聞くことで、その企業にどのようなタイプの人材が合うのかが見えてきます。就職者と企業の双方にとって良いマッチングにつなげられるため、今後の紹介に生かすことができます。職種を問わず人手不足に直面している企業が多く、弊社から複数人を紹介している企業も少なくありません。 人材事業では、キャリアアドバイザーを2人増やしました。今期は新卒も中途も、より多くの人たちをサポートする体制が整いました。企業側からは、野球に限らず他のスポーツの経験者を求める声もいただいているので、野球経験者以外にも対象を拡大していけたらと思っています。 今年4月から利用者さんの受け入れを開始した「えんどらん」 ■異業種への挑戦 4期目は「えんどらん」を軌道に 3期目は、新規事業で就労継続支援B型事業所の「えんどらん」をスタートしました。4月から利用者さんの受け入れを開始し、毎月1人ずつ新たにご利用いただいています。就労継続支援事業所はスタッフの人数などによって、受け入れられる利用者さんの数が決まっています。「えんどらん」では、月に1~3人の受け入れを想定しています。 利用者さんには現在、野球塾に入会してくれたスクール生向けにプレゼントするグッズの裁縫、グラブの革の端材を活用したキーホルダーの作成、野球塾で使うボールの手入れを主な仕事としてお願いしています。前期で運営体制は整ったので、今期は事業拡大に向けて力を入れていくつもりです。 福祉事業は野球と無関係に見えますが、「えんどらん」では野球とのつながりをつくり、他の事業所にはない特色を出していこうと考えています。これまでに経験のない異業種への挑戦なので、難しさは感じます。しかし、同時に新しい知識が増える楽しみもあります。福祉事業は地域や社会への貢献も大きな役割ですが、事業所のスタッフや利用者さんの充実感につながるよう、収益にもこだわっていきたいと思っています。
- 豪華すぎる「大谷・藤浪世代」 同級生ベストナインを独断選出
■選出の条件 「チームメート」または「対戦選手」 メジャーリーグや日本のプロ野球を見ていると、最近ふと思うことがあります。「自分は、すごい世代で野球をしていたんだな」と。私は1995年2月生まれで、いわゆる「大谷・藤浪世代」です。ドジャース・大谷翔平選手やDeNA・藤浪晋太郎選手をはじめ、プロで実績を残している選手が非常に多い学年です。 私は現役時代に大阪桐蔭高校、亜細亜大学、東邦ガスでプレーし、プロに進んだ同級生のチームメートが数多くいます。また、対戦して能力の高さに驚いた同級生の選手もたくさんいました。今回のコラムでは、私が選ぶ同級生のベストナインを発表します。選出する選手は、同じチームでプレーした選手、または対戦経験のある選手を条件としています。 【水本弦が選ぶ同級生ベストナイン】※敬称略 投手:大谷翔平 捕手:田村龍弘 一塁:田端良基 二塁:吉川尚輝 三塁:森下翔平 遊撃:木浪聖也 左翼:笹川晃平 中堅:近本光司 右翼:水本弦(笑) 写真はイメージ ■投手は迷わず大谷翔平選手 遊撃手は激戦の末… 投手は迷わず、大谷翔平選手です。今シーズンはサイ・ヤング賞も期待される、世界を代表する選手です。大谷選手とは高校時代にセンバツで対戦し、高校日本代表ではチームメートでした。そのすごさは、私が改めて解説する必要もなく、皆さんご存じの通りです。 捕手には、現在ロッテでプレーする田村龍弘選手を選びました。頭脳派の選手で、心理的な読みや状況を判断する力は高校時代から突出していました。高校3年生の甲子園では春も夏も、田村選手を擁する光星学院と決勝で対戦しました。高校日本代表ではチームメートでした。田村選手は捕手ではなく三塁を守っていましたが、外野手へのポジショニングの指示やミーティングの発言に賢さを感じました。 一塁手は、大阪桐蔭で一緒にプレーした田端良基選手です。高校入学時から、打力が頭1つ、2つ抜けていました。甲子園で大谷翔平選手から本塁打を放つなど、豪快な印象があるかもしれませんが、振る力だけではなく技術も高かったですね。フルスイングしながらタイミングを合わせられる打者。同じ大阪桐蔭で1学年後輩だったオリックス・森友哉選手の右打者バージョンというイメージです。 二塁手は、巨人・吉川尚輝選手を選出しました。大学時代、吉川選手が在籍していた中京学院と全日本選手権で対戦しました。走攻守すべてにスピード感があり、身体能力の高さを感じました。当時は体が細かったですが、長打力も兼ね備える打者でした。 三塁手は森下翔平選手です。東海大相模高校から東海大学、日立製作所に進んだ選手で、大学と社会人で対戦しました。恵まれた体格を生かした飛距離が魅力的な打者です。どの試合も打たれているイメージがあり、勝負強さが印象に残っています。 遊撃手は非常に迷いました。DeNA・京田陽太選手や元阪神・北條史也選手も浮かびましたが、亜細亜大学でチームメートだった木浪聖也選手を選びました。走力や打力で飛び抜けた選手ではありませんが、安定感が抜群です。守備のスローイングをはじめ、走攻守いずれも、そつなくこなします。実はボウリングも上手で、パーフェクトゲームを達成しています。野球以外のスポーツでも一流になれる、器用なタイプだと感じます。 写真はイメージ ■外野手は強肩や俊足の選手 同級生は他にも有名選手多数 外野手は、1人目が笹川晃平選手です。浦和学院高校、東洋大学、東京ガスとアマチュア野球界の王道を歩み、現在は海外でプレーしていると聞いています。三拍子そろった選手で、特に肩の強さが目を引きました。私も外野手でしたが、足と肩には自信がありませんでした。守備力の高い選手には憧れがありましたね。 外野手の2人目は、阪神の近本光司選手です。笹川選手の強肩と同様、自分にない能力という点で近本選手の足はうらやましい限りです。現役時代にスピードのある選手をたくさん見てきた中でも、近本選手の速さは別格です。社会人野球で対戦した際、そのスピードに見入ってしまいました。 外野手の残り1枠は、私が選出する企画なので水本弦を入れました。異論は受け付けませんので、ご容赦ください(笑)。 以上、私が選ぶ同級生のベストナインでした。チームメートや対戦経験がない選手も含めると、カブス・鈴木誠也選手、阪神・大山悠輔選手といった球界を代表する選手もいます。こうやって同級生の名前を挙げると、改めて「大谷・藤浪世代」のすごさを感じます。
- 「初球から振れ!」の指示に効果は? 好打者に共通する技術
写真はイメージ ■「振らない」ではなく「振れない」 初球スイングは技術 初球から振れ!――野球チームの指導者から、よく聞く言葉の1つです。お子さんがチームに所属している保護者の方々も、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 野球経験がない人や経験が浅い人にとっては、初球の甘い球を見逃す打者に対して「バットを振れと言われているのに、なぜ振らないのか?」と不思議に思うかもしれません。しかし、初球やファーストストライクをスイングするのは技術が必要です。 私は、現役時代も指導者になってからも幅広いカテゴリーの選手を見てきました。その中で、好打者の条件や共通点の1つと考えているのが、「初球をスイングできるかどうか」です。 初球からバットを振るには、投球にタイミングを合わせなければいけません。初対戦またはほとんど対戦経験がない投手に対し、1球目からタイミングを合わせるのは、かなり高い技術が求められます。特に球の軌道は打席に立たないと分からない部分があります。 打者は形を崩されると、バットを強く振れないと本能的に判断してスイングをやめます。このままスイングしても安打の確率が低いと分かるためです。初球を「振らない」のではなく、「振れない」のです。 野球塾では選手に合ったドリルやトレーニングを解説 ■要因はメンタルではない 指導者の怒りは逆効果 初球を見逃さずにスイングするには、タイミングやバランスが大事です。バットが出ないのはメンタルが要因ではありません。そのため、指導者が「初球からバットを振れ!」と怒っても問題は解決しません。選手がバットを振れない理由に目を向けて、課題を解決する練習をする必要があります。 プロ野球を見ていると、各打者が初球からフルスイングしています。初球を振ってファウルになるのは、バットを強く振ることができている証です。まさに、理想の打撃と言えます。 私は現役時代、どちらかというと、タイミングを取るのが苦手でした。初球からバットを振れない選手の気持ちは、よく分かります。早いカウントからスイングできるかどうかは、調子のバロメーターでした。初球からフルスイングできる時は調子がよく、調子が悪いとストライクゾーンにきても見逃してしまいました。 ファーストストライクをフルスイングできるかどうかは、打力や調子の目安となります。それだけ、タイミングを取る技術や打席での感覚が求められます。タイミングは打撃において、最も重要な要素だと私は考えています。極端な表現をすれば、打撃の形が悪くても、タイミングさえ上手く取れれば安打になります。それくらい大事であり、難しいのがタイミングです。 初球を振らなかった結果を批判するのは簡単です。そうではなく、指導者や保護者の方々には、「振れなかった」原因を選手と一緒に考えてもらえたらと思います。
- 相棒は懐中電灯 早朝の“白球”に恐怖… 亜大野球部1年の任務
亜細亜大学時代の水本 ■暗闇の中をボール探し 大学1年生には役割 野球に限らないと思いますが、部活に所属していると下級生にはグラウンド内外で役割があります。私が卒業した亜細亜大学では、1年生に担当がありました。例えば、練習後にボールをノック用やティー打撃用などに仕分けしたり、打撃マシンのメンテナンスをしたりする係がありました。 私は毎日の練習後に回収し忘れたボールがないか確認する係でした。先輩たち全員が練習を終えたら、グラウンドの中や外をくまなく見回る仕事です。 練習が終了するのは夕方か夜なので、グラウンドの周りは真っ暗です。私は同じ係の同級生と一緒に、懐中電灯を手にしてボールが落ちていないか探しました。 草むらの中やネット際など、見落としがないように丁寧に見回りをします。しかし、汚れているボールは暗闇に紛れることもあって、見つけられない時があります。 野球塾の指導前にウォーミングアップ ■部屋の掃除やゴミ出し 寮生活にも1年生の担当 当時チームを指揮していた生田勉監督は毎朝、グラウンドの周りをランニングする習慣がありました。その時、生田監督は回収されていないボールを見つけると、グラウンドに投げ入れていました。練習後、グラウンドにボールが落ちていることはあり得ません。翌日の朝練でグラウンド内にボールがあるのは、生田監督からの無言のメッセージなわけです。 朝練が始まる時、グラウンド内で白っぽい球体を発見すると、選手たちに焦りが広がります。特に慌てるのが2年生です。2年生は1年生を教育する役割があり、1年生のミスを上級生やコーチから指摘されて改善を求められます。ミスを繰り返したり、気の緩みからミスをしたりした場合はペナルティが課されます。 寮生活でも、1年生には役割がありました。亜細亜大学野球部の寮は、1年生から4年生まで各学年1人ずつの4人部屋でした。1年生は、部屋のゴミ出しや掃除を担当します。それから、一番早く起きて、先輩たちに声をかけます。全員が目覚ましをかけていますが、1年生が寝坊すると、部屋にいる全員が寝過ごしてしまうリスクがあるので、重要な任務です。 ■朝練は午前6時スタート 寝坊は4年間で一度だけ 朝練は午前6時スタートで、5時半頃にグラウンドへ出ます。点呼を取るので、寝坊で不在の選手はすぐに分かってしまいます。私が在学中に寝坊したのは一度だけでした。チームで最も少ないくらいです。 部活の係や寮生活の厳しさは、今思うと特殊だったと感じます。亜細亜大学は練習も含めて「日本一過酷」とも言われています。練習中もグラウンドを離れても、想像を絶するプレッシャーです。ただ、当時は当たり前だと思っていました。毎日のことなので、慣れていく部分もあります。野球の技術だけではなく、学びの多い4年間でした。あの頃には戻りたくありませんが(笑)。
- そのモノマネは危険? 小・中学生が手本にすべき打者は?
中学生を対象にした出張授業 ■手本にすべきは近藤健介選手 体の使い方にヒント SNSの普及によって、今はプロ野球選手のプレーや練習が手軽に見られるようになりました。野球が上手くなる教材が豊富な一方、情報は玉石混交です。中には、あまり参考にしてほしくない理論や動画も少なくありません。 プロ野球選手の打撃フォームを見ると、それぞれに個性があって、全く違う打ち方に感じるかもしれません。しかし、安定して結果を残している打者には、打撃フォームに共通点があります。バットの芯で捉える確率を高めたり、打球を遠くに飛ばしたりするポイントがあるわけです。 昔から、モノマネは上達への手段と言われています。それは一理ありますが、個々の選手に合った見本を選ばないと思ったような結果は得られません。例えば、まだ成長期で体ができていない小・中学生が大谷翔平選手の打ち方をまねしても、逆効果になってしまう可能性が高いです。 私が小・中学生に手本としてほしい選手は、ソフトバンクの近藤健介選手です。近藤選手は身長171センチと決して体が大きくありません。それでも、2023年には最多本塁打のタイトルを獲得し、ここ数年は長打率5割前後を維持するなど、確実性に加えて長打力も兼ね備えています。 あの体格で飛距離を出せるのは、体の使い方や力の伝え方に長けているからです。タイミングを合わせるのも上手いです。投手や球種への対応力が高く、タイミングを外されてもファウルにできるため三振が少なく、安打の確率を高められます。 打撃を向上させたい小・中学生にもおすすめ「ニュートンバット」 ■ドリルは「あえて大げさな動き」 “誤解”に注意 どんなにスイングスピードが速くても、パワーがあっても、タイミングを外されたら安打の確率は大幅に下がります。YouTubeやInstagramには様々な打撃ドリルがアップされていますが、タイミングを合わせるのが前提になっています。「打撃はタイミングが全て」と言えるくらい重要だと私は考えています。 小・中学生には、まねをしてほしくない選手もいます。例えば、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手です。ジャッジ選手が取り入れている打撃ドリルの動画は、日本の子どもたちや保護者も見ている人が多いと思います。動画を見よう見まねでやっている小・中学生を見かけることがあります。 動画では、後ろ足に極端に体重が残った形でジャッジ選手がドリルを繰り返しているシーンが出てきます。注意すべきなのは、「あくまでもドリル」という点です。ドリルには、無意識に理想的な体の動かし方を身に付ける目的があります。クセを付けるために、あえて大げさな形で練習するわけです。試合とは打撃フォームが異なります。 その点を理解せず、ドリルの形で試合に入ってしまうと結果を出すのは難しくなります。ドリルでは後ろ足に体重を残しているジャッジ選手も、試合では踏み込む足にしっかりと体重移動しています。一流選手の一部分だけを見てまねをするのは、練習時間に見合う成果を得られない可能性が高いです。ジャッジ選手は身長が2メートルを超え、体重は130キロ近くあります。小・中学生が参考にするには、違いが大きすぎる選手です。 ■高校2年生まで両投げ 松井稼頭央さんに憧れて 私は子どもの頃、憧れていたプロ野球選手がいました。メジャーリーグでもプレーした松井稼頭央さんです。打ち方のまねはしませんでしたが、スナップスローの強さやスピード感のある動きにかっこよさを感じました。今でも、松井さんの現役時代の守備を動画で見ると、思わずうなってしまいます。 私は左投げですが、高校2年生までは両投げの選手でした。中学生の時は投手や外野手では左投げ、ショートを守る時は右投げ。右投げの練習をしたのは、松井さんのようになりたくて、ショートを守りたかったからです。プロ野球選手には、子どもたちの向上心や好奇心をかき立てる力がありますよね。今の小・中学生にも、プロのプレーからモチベーションやパフォーマンスアップのヒントをつかんでもらいたいです。
- 打球はバットで変わる 新ニュートンバットは“音”が進化
リニューアルした「ニュートンバット」は音が進化 ■イメージや感覚と合うバット模索 様々なタイプを比較 野球と他のスポーツの大きな違いの1つは、「道具」です。もちろんパワーやスピードは選手の武器になりますが、バットやグラブといった道具を上手く使えなければパフォーマンスを発揮できません。そこに野球の難しさがあり、同時におもしろさがあると思っています。体が小さくてもバットやボールを自在に操り、無駄なく力を伝えられる選手は活躍できます。 高校生まではグリップが太めで、打った時の音が心地良いものを選ぶくらいでした。バットにはトレンドがあり、私たちの時代はSSKのスカイビート31というバットをどの高校も使っていた記憶があります。私はミズノのVコングが好みでした。 私は打撃で勝負する選手だったので、大学や社会人では重心の位置やグリップの形、素材や色などタイプが異なるバットを比較しました。大学に入ってからは一通りのバットを試し、それぞれ感覚が異なると気付きました。高校生の時に使っていたのは、バットの先端に重心があるトップバランスでした。トップに重さがあるバットはヘッドが遅れてくる感覚があり、自分がイメージする打撃と合っていました。 ところが、ヘッドが遅れた分だけ、今度はバットを返す力が必要になります。私は返す力が弱かったので、柔らかい打撃はできても、力強さに欠ける課題を感じていました。大学では、ヘッドの重さを感じながらも、もう少し重心がグリップ寄りのバットの方が自分には適していると考えてカウンターバランスに変更しました。 ■社会人では色にもこだわり 白木の単色がフィット グリップもタイカップに変えました。手首を柔らかく使い過ぎていると感じたためです。タイカップは手首が固まって強さを出しやすく、感覚が良くなりました。 社会人になってからは、バットの色も比べました。一色だけのもの、グリップだけ色が違うもの、先端に向かって色が濃くなるものなど、様々なバットを試しました。結果的に決めたのは、白木の単色です。バットの先に色が付いているとヘッドを意識しやすいメリットがありましたが、その意識が強くなり過ぎてヘッドが遅れる感覚があったためです。 バットの重さを生かしてスイングしたり、力を無駄なくバットに伝えたりするには、ヘッドを使う感覚が不可欠です。カテゴリーが上にいくほど、ヘッドを使う感覚は大前提で、その他の部分に意識を向ける必要性が高まります。 新バージョンの「ニュートンバット」は3色展開 ■“音”を改良 「ニュートンバット」新バージョン 私は現在、小・中学生を中心に指導する野球塾を運営しています。体が小さくても打球を遠くに飛ばせる選手は、ヘッドの重さを上手く使ったスイングができています。ヘッドを利かせる感覚は、説明されても理解するのが難しい選手が少なくありません。そこで、私たちはバットの開発も手掛けています。 「Newton(ニュートン)」と名付けたバットは、先端に砂が入っています。ヘッドを使ってスイングできると、砂が動いて音が鳴る構造になっています。バットを振ると、理想的なスイングになっているか自分で確かめられるわけです。トレーニング用ですが、素振りだけではなく、実際にボールを打つこともできるバットです。 「Newton」は発売からご好評いただき、欠品が続く時期もありました。4月からはリニューアルした新しいバージョンの販売を始めました。砂の量を減らしてバット自体を軽くし、より試合で使うバットの重さに近づけました。 砂の量は減っているにもかかわらず、音は分かりやすくなる工夫も凝らしました。ビーズを入れたタイプに一新し、音が周囲の人にも聞こえる大きさになっています。バットを使う人だけではなく、保護者や指導者も音を確認できます。 色は「惑星(Newton)」をイメージした3色展開です。バットを振る意欲が高まる色合いに仕上げました。個人的には、ビーナスグリーンが気に入っています。個人でもチームでも、活用していただければと思います。
- 「仕掛け」が象徴 3季ぶり甲子園で優勝 大阪桐蔭に感じた変化と課題
大阪桐蔭の優勝で幕を閉じたセンバツ ■春夏合わせて10回目の日本一 打線には物足りなさ 選抜高校野球大会は大阪桐蔭が優勝しました。春夏合わせて10回目の甲子園優勝です。去年は春夏ともに甲子園出場を逃し、OBとして寂しさもあっただけに喜びも大きいです。 今大会は圧倒的な強さというより、接戦をものにする粘り強さが印象的でした。あえて辛口に評価すると、打線に物足りなさを感じました。春先なので、寒さや実戦不足など、これから伸びていく部分はあると思います。そうした点を考慮した上で、スイングの力強さや迫力を感じませんでした。 強い時の大阪桐蔭は3点、4点取られても、いつでも取り返せる雰囲気があります。今回は相手に先制されると、かなり苦しくなる印象を受けました。体つきも全体的に、まだ線が細いです。 それでも、日本一になったのは明るい材料です。1点差ゲームに競り勝ち、敗戦を覚悟する試合展開でも勝ちを拾っていました。勝負強さに期待を感じさせました。追い込まれた経験をすると、次の試合で先制されても慌てることがなくなります。チーム力を上げるには、苦しい試合を経験した方が良いと思っています。 ■SNS発信を西谷監督が参考に? 「仕掛け」が復活 今大会で大阪桐蔭の攻撃に感じた変化もありました。それは、「仕掛け」です。初戦から、エンドランを積極的に使っていました。ここ数年、大阪桐蔭は走者を動かす攻撃が極端に減ったと感じていました。そして、私はXやYouTubeで度々、「もっとエンドランを使った方が良い」と発信していました。「発信した内容を西谷先生が参考にしたのかな」と思うくらい、今春のセンバツでは動いていましたね。上手くいかなくても、何度も何度も仕掛けていました。 打力が強くないチームは、連打で得点できる確率が高くありません。エンドランを使えば、内野ゴロが安打になる可能性もあります。二遊間の選手がベースに入るために一歩、二歩動いたり、体重移動したりしただけで、安打のゾーンは広がります。エンドランのサインが出ると、打者はどんな球でもスイングするため、迷わずにバットを振れる利点もあります。 積極的に仕掛けることで、相手チームに考えさせる効果もあります。試合序盤にエンドランをかけると、当然ながらバッテリーは警戒します。その結果、制球を乱したり、配球に偏りが出たり、様々な形でプレッシャーをかけられるわけです。エンドランは成功すればチャンスが拡大し、相手にイメージを植え付けるだけでも優位に立てます。 ただ、大阪桐蔭打線のエンドランは現状では、まだまだ精度を上げていく必要があります。エンドランで避けなければいけないのは空振りとセンターラインへの打球です。今大会では、この2つが目立ちました。そこは、選手たちも認識しているはずです。私たちの頃から、チームでは普段からエンドランの練習を繰り返していました。甲子園で見えた課題を今後、改善していくと思います。 春のセンバツでベスト4入りしたチーム ■川本投手ら投手陣に強み 夏につながるセンバツ優勝 投手陣は全体的に球が強いと感じました。中でも、背番号10の2年生左腕・川本晴大投手の球は簡単には打てないと思います。まだ粗さはありますが、身長190センチを超える長身は大きな武器です。私も高校時代、チームメートの藤浪晋太郎投手や花巻東の大谷翔平投手相手に打席に立った経験があります。相手投手の身長が高いとマウンドまでの距離が近く感じ、覆いかぶさってくるような感覚になります。同じ150キロの球速でも、打撃マシンとは全く違います。 川本投手は、140キロ台の力のあるストレートに110キロ前後の落差の大きなカーブやスライダーを組み合わせる投球です。左打者は特に内角にストレートを見せられると、変化球に対応するのは難しくなります。 私たちが甲子園で春夏連覇を成し遂げた時、実はセンバツで苦戦続きでした。5試合中、3試合が逆転勝ち。残りの2試合も先制したものの、一度は追い付かれています。9回まで負けていた試合もありました。 優勝できるとは想像していなかった中、結果的に勝ち上がったことでチームに自信が生まれました。全体的に調子が上がっていなかったので、普段通りに戦えれば全国の舞台でも十分勝負できると前向きになれました。 今年の大阪桐蔭は3季ぶりの甲子園とあって、自分たちの力に半信半疑だったはずです。その中で、日本一になれたことは、夏にもつながっていくと思います。 今春のセンバツは弊社Ring Matchとしても盛り上がりました。私は大阪桐蔭出身で、執行役員の小林は中京大中京出身です。中京大中京は準決勝で智弁学園に1点差で敗れて決勝での対決は実現しませんでしたが、今夏は両校の対決も期待したいです。











